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福岡地方裁判所 昭和44年(行ウ)14号 判決

北九州市小倉区紺屋町七丁目二〇九番地

原告

日産商事株式会社

右代表者代表取締役

久保利夫

右訴訟代理人弁護士

青山政雄

同市同区三萩野内の堀一〇四八番地

被告

小倉税務署長

右指定代理人

麻田正勝

山本秀雄

右指定代理人

大神哲成

井口哲五郎

伊東次男

烏谷吾郎

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者双方の求める裁判

一、原告の求める裁判

(一)  被告が原告に対し昭和四二年一二月二五日付でなした、原告の昭和四一年四月一日から昭和四二年三月三一日に至る事業年度の法人税に関する更正処分および加算税賦課決定を取り消す。

(二)  被告が原告に対し昭和四二年一二月二一日付でなした昭和四一年四月一日から昭和四二年三月二一日までの事業年度以降青色申告書提出承認を取り消す旨の処分を取り消す。

(三)  訴訟費用は被告の負担とする。

二、被告の求める裁判

主文と同旨

第二当事者双方の主張

一、請求の原因

(一)  原告は、株式会社日立製作所(以下日立製作所と言う)の製造にかかる商品及びその関連商品の販売並びに修理及びこれに付帯する一切の業務を行うことを目的として、肩書所在地に本店を有する株式会所であり、その法人税の申告につき、所轄税務署長から青色申告書提出の承認を得て納税を続けてきた法人であるが、被告に対し、原告の昭和四一年四月一日から昭和四二年三月三一日までの事業年度分に関して所得額を二、五五九、六七四円とする法人税青色確定申告を行なつた。

(二)  ところが、被告は、原告に対し昭和四二年一二月二五日付で右事業年度の所得金額を金一〇、五一〇、六五八円とする更正処分並びに加算税賦課決定をなした。

(三)  なお、被告は、原告に対し昭和四二年一二月二一日付で青色申告書提出承認を取り消す旨の処分(以下青色申告承認取り消し処分という)をなした。

(四)  そこで、原告は、右更正処分について被告に対し異議の申立をなしたが、被告は昭和四三年三月一五日右異議申立を棄却したので、さらに、原告は、福岡国税局長に対し審査請求の申立をなしたが、同国税局長は昭和四三年一一月二二日右審査請求を棄却する旨の決定をなし、同年一二月一六日原告に通知してきた。

(五)1. 然しながら、本件更正処分は、その通知書に法人税法一三〇条二項にいうところの具体的理由が付記されていない点で手続的に違法であるのみならず、

2. 原告には、本件更正処分において増額更正をされたような過大な所得はないので、実体的にも違法である。

3. また本件加算税賦課決定は、前項2と同様の理由で違法である。

(六)  そして、本件青色申告承認取り消し処分は、法人税法一二七条一項各号の事由がないのになされたものであり違法である。

(七)  よつて本件更正処分並びに加算税賦課決定及び青色申告承認取り消し処分の各取り消しを求める。

二、請求の原因に対する認否

(一)  請求の原因(一)ないし(四)は認める。

(二)  同(五)ないし(七)は争う。

三、被告の主張

(一)  本件更正処分の手続的適法性について

1. 被告は、昭和四二年一二月二一日、原告の昭和四一年四月一日から昭和四二年三月三一日に至る事業年度以降その法人税の申告について青色申告書提出の承認を取り消したのであるから、右事業年度分についてなされた本件確定申告書は、法人税法一二七条一項によつて青色申告書以外の申告書とみなされることになる。したがつて、本件更正処分の通知書については同法一三〇条二項の具体的理由の付記は必要でなくなる。

2. 被告は、原告の異議申立に対じて、次の理由を決定書に付記してこれを棄却した。「貴社は昭和四一年三月三一日に計上の土地、建物が、代表者個人の所有物件であるとして原処分の取り消しを求めているが、異議申立書に明示の如く、保証担保として無償提供し、仕入先に提出するバランスリストに当該土地、建物を当法人の資産に計上と明言してあり、個人名義の土地、建物も当初個人名義より日産家庭電気(株)に私財提供し、その後日産家電、日立家電(株)、日産商事(株)と順次物件は移転し、池田吟子に対する売却となつており、実質的に土地、建物の所有権は個人より法人に移行しているから申立には理由がない。」

(二)  本件更正処分の実体的適法性について

1. 係争事業年度の確定申告額(原告主張額)及び更正処分額(被告主張額)の内訳は次のとおりである。

〈省略〉

〈省略〉

2. 右内訳表備考欄の損金不算入分および益金加算分の認定根拠は次のとおりである。

(1) 右内訳表「六、営業費」の損金不算入分八二二、一九〇円について。

(イ) 売上割戻関係未払費用分七二七、二九〇円について。

原告は昭和四一年一二月二一日から昭和四二年四月二〇日に至る期間木工電動工具の躍進セールを実施し、四月二〇日迄に目標額を達成したあかつきには五パーセントのリベートを支払うということを口頭で各販売店に知らせ、三月末までの実績に対し五パーセントに相当するリベートの予定額を組んで未払として損金に計上していたが、この金額はあくまで予定額であり損金として確定していないので否認した。

(ロ) 退職給与引当金分九四、九〇〇円について

原告が営業費として計上していた退職給与引当金九四、九〇〇円は、青色申告承認の取消にともなつて否認した。

右、(イ)+(ロ)計八二二、一九〇円

(2) 右内訳表「七、営業外収益」の益金加算分五、三二八、七九四円について。

(イ) 受取利息分一九、二〇〇円について。

後記(ロ)の不動産売却益漏れによる簿外預金の利息を益金に加算したものである。

(ロ) 雑収入分五、三〇九、五九四円について。

〈a〉 不動産売却益漏れ分五、三〇〇、〇〇〇円について。

原告は、小倉市堺町六一の一に所有していた土地、建物(以下本件土地建物という)を訴外池田吟子(以下池田という)に売却した際、一五、三〇〇、〇〇〇円で売却したにもかかわらず、一〇、〇〇〇、〇〇〇円で売却したとして原告帳簿に計上し、差額の五、三〇〇、〇〇〇円を簿外として、原告代表者久保利夫(以下久保という)個人の預金および同人の妻名義で購入した土地、建物の支払代金にあてていたので、この五、三〇〇、〇〇〇円を不動産売却益漏れとして益金に加算したものである。

〈b〉 別口利益漏れ分九、五九四円について。

日産火災海上保険の代理店としての収入手数料五五、九五九円および経費四六、三六五円を法人計算として計上せず簿外としていたので、差引九、五九四円の利益を益金に加算した。

右、〈a〉+〈b〉計五、三〇九、五九四円

(3) 右内訳表「八、営業外費用」の損金不算入分一、八〇〇、〇〇〇円について。

(イ) 貸倒引当金繰入分一、一〇〇、〇〇〇円について。

右は青色申告承認の取り消しにともなつて損金に算入することを否認した。

(ロ) 価格変動準備金繰入分七〇〇、〇〇〇円について。

右は青色申告承認の取り消しにともなつて損金に算入することを否認した。

右、(イ)+(ロ)計一、八〇〇、〇〇〇円

(三)  加算税の賦課について

1. 前記内訳表で、確定申告額と更正処分額との間に差額を生じている項目のうち、同表「七、(3)雑収入」項目の不動産売却益漏れ分五、三〇〇、〇〇〇円については、前記のとおり、本件土地建物を池田に、一五、三〇〇、〇〇〇円で売却したにもかかわらず、この事実を隠ぺい糊塗して、帳簿上一〇、〇〇〇、〇〇〇円で売却した旨の虚偽の記載をなし、右隠ぺい糊塗したところに基づいて納税申告書を提出していたのでこれに対し、また同表「七、(1)受取利息」益金加算分一九、二〇〇円については、これは右不動産売却益漏れ分の簿外預金利息であるからこれに対し、それぞれ国税通則法六八条一項に基づき重加算税を賦課した。

2. 同じく右内訳表の項目中、同表「六、営業費」項目損金不算入分八二二、一九〇円のうち、売上割戻関係未払費用分七二七、二九〇円について、国税通則法六五条一項に基づき過少申告加算税を賦課した。

(四)  青色申告承認の取り消しについて。

原告に前記、三(三)1記載の事実があり、右事実は法人税法一二七条一項三号に該当するので、被告は青色申告の承認を取り消した。

四、被告の主張に対する原告の認否および反論

(一)  被告の主張(一)1の事実のうち、青色申告承認の取り消し処分があつたことは認める。

(二)  同(一)2の事実は認める。

(三)  同(二)1の事実は認める。

(四)  同(二)の事実のうち、(2)(イ)受取利息分についての更正処分の適法性を争い、(2)(ロ)〈a〉不動産売却益漏れ分についての事実およびその更正処分の適法性を争い、その余の事実は認める。

(五)  同(三)1の主張は争う。

(六)  同(四)の事実のうち、青色申告承認取り消し処分のなされたことは認めるが、その余の事実は争う。

(七)  (本件土地建物に関する不動産売却益漏れ分についての被告の主張について)

本件土地建物は久保の所有にかかるものであるが、原告に一時不良債権が発生し、資産状況が悪くなつたため主たる取引先である日立家庭電器販売株式会社(以下日立家電という)の要請により、同社に本件土地建物を担保に提供することとし、抵当権設定をなすとともに、保証債務の範囲内で、右土地建物の価格の一部一〇、〇〇〇、〇〇〇円について帳簿のうえで原告の資産として計上したものである。そして右土地建物は、昭和四〇年二月日立家庭電に対する保証債務九、七〇〇、〇〇〇円の支払のため同社へ代物弁済され、さらに同年四月、同額の代金で、久保が同社から買戻した。その後久保は昭和四一年六月池田に対し代金一五、三〇〇、〇〇〇円でこれを売却したが、このうち一〇、〇〇〇、〇〇〇円については、原告の資産として計上してあるので、原告会社帳簿上、資産の部から右土地建物一〇、〇〇〇、〇〇〇円を減額(売却処分)し、かわりに現金一〇、〇〇〇、〇〇〇円(売却代金名義)を計上したものであり、その余の五、三〇〇、〇〇〇円については、久保個人が不動産譲渡益として取得したものである。従つて久保は右譲渡益について、個人の譲渡所得として申告し納税している。

以上のとおり、実質的に収益を享受しているのは久保個人であつて原告ではなく、被告の本件更正処分は、実質課税の原則(法人税法一一条、所得税法一二条)に反する違法のものである。

(八)  (重加算税賦課決定、青色申告承認取り消し処分に関する被告主張について)

1. 前項(七)において述べた如く、帳簿上一〇、〇〇〇、〇〇〇円で売却した旨の記載は虚偽ではなく、実体を反映した経理をしたものであり、従つて虚偽の納税申告をしたものでもない。よつて国税通則法六八条一項、法人税法一二七条一項三号に該当する事由はない。

2. 被告は、本件確定申告について、原告の確定申告書作成に関する指導者公認会計士武信順也の意見を徴することなく、税務等の知識に之しい久保を詰問したのみで本件処分をなした。これは法人税法一二七条一項を濫用したものである。

五、証拠

(一)  原告

1. 甲第一号証の一、二

2. 乙第一号証の一ないし三、第二号証の一ないし三、第三ないし第五号証、第七号証の成立はいずれも認め、乙第六号証の一ないし七の成立はいずれも不知。

3. 証人北本信也の証言、原告代表者久保利夫尋問の結果。

(二)  被告

1. 乙第一号証の一ないし三、第二号証の一ないし三、第三ないし第五号証、第六号証の一ないし七、第七号証。

2. 甲号証の成立はいずれも認める。

3. 証人小淵治男の証言

理由

一、原告の請求の原因(一)ないし(四)の各事実は当事者間に争いがない。

なお本件更正処分については、異議申立、審査請求を経ているが、加算税賦課決定および青色申告承認取り消し処分については、不服申立を経たか否かについて、証拠上明らかではないが、本件更正処分並びに加算税賦課決定及び青色申告承認取り消し処分は、同一事業年度の同一法人税確定申告について、本件土地売却という、同一の事実をめぐつて、その売却益が原告に帰属するや否やを共通の争点とするものであり、さらに重加算税賦課決定と青色申告承認取り消し処分とは、右売脚の事実(売却代金、その帰属等)の隠ぺい糊塗の有無という同一の要件事実に関するものであるから、右加算税賦課決定および青色申告承認取り消し処分は、本件更正処分とは基本的事実関係が同一であり、原告の不服とする理由も共通であつて、相互に関連する処分ということができる、従つて、本件において、更正処分につき不服申立がなされ、棄却されている以上、右更正処分に関連する本件加算税賦課決定、青色申告承認取り消し処分については、不服申立をしても棄却されることがあらかじめ予想されるわけであるから、これを経由することは無意味であり、本件加算税賦課決定および青色申告承認取り消し処分について不服申立をしていなくても、本件訴えは適法ということになる(行政事件訴訟法八条二項三号)。

二、本件更正処分の適否

(一)  手続的適法性について

被告が昭和四二年一二月二一日付で、原告の昭和四一年四月一日から昭和四二年三月三一日に至る事業年度以降、その法人税に関する青色申告書提出の承認を取り消したことは当事者間に争いがなく、この青色申告承認取消処分が適法であることは後記認定のとおりである。

そうだとすると、法人税法一二七条一項により、右事業年度に提出された原告の青色申告書(本件更正処分に係る青色確定申告書)は、青色申告書以外の申告書とみなされることになる。従つて同法一三〇条二項で要求される具体的理由の付記は必要でないことになり、この点に関する原告の非難は当らない。

(二)  実体的適法性について

1. 本件確定申告額、更正処分額が事実摘示欄三被告の主張(二)1.記載の内訳表のとおりであることは、当事者間に争いがない。

そして、右申告において営業費に関し売上割戻関係未払費用として七二七、二九〇円の損金を計上したが、これが損金として確定していないこと、営業外収益に関し九、五九四円の未計上収入の存在したことは、当事者間に争いがないから、これに伴う更正処分は適法と認められる。

つぎに、原告が営業費として退職給与引当金九四、九〇〇円、営業外費用として貸倒引当金繰入分一、一〇〇、〇〇〇円および価格変動準備金繰入分七〇〇、〇〇〇円をそれぞれ損金として申告したことは当事者間に争いがないところ、本件青色申告承認取り消し処分が適法であることは後に認定するとおりであるから、右青色申告承認の取り消しに伴つて右各費用を損金から控除した更正処分は適法というべきである(昭和四三年法律第二二号による改正前の法人税法五二条一項、五五条一項、租税特別措置法一九条一項参照)。

右内訳表「七、(3)雑収入」の更正処分額(不動産売却益相当分)五、三〇〇、〇〇〇円の適法性について。

(1)  被告の主張(二)2.(2)(ロ)〈a〉について判断する。

その成立につきいずれも当事者間に争いのない甲第一号証の一、二、乙第一号証の一ないし三、第二号証の一ないし三、第三ないし第五号証、証人小淵治男の証言によりいずれもその成立を認める乙第六号証の一ないし七、並びに証人北本信也、同小淵治男の各証言及び原告代表者久保利夫尋問の結果(以上いずれも後記認定に反する部分を除く)を総合すれば次の事実が認められる。

昭和三七年四月二日、日産商事株式会社(以下旧日産商事という)の営業部門の一部が独立して原告会社が発足し、残余の旧日産商事は同月一日、日産家庭電器株式会社(以下日産家電という)と社名を変更し、同社は昭和三九年一一月頃清算が開始され、現在清算結了により消滅している。なお、旧日産商事の債権債務は、原告会社と日産家電に受け継がれていた。原告会社代表者久保は、旧日産商事、日産家電の代表者でもあつたが、昭和二八年四月および九月、旧日産商事が日立製作所と取引関係を結ぶに当たり自己の所有し居住する本件土地建物に債権極度額計三、〇〇〇、〇〇〇円の根抵当権を設定するとともに、その頃発生した不良債権補てんのために帳簿上旧日産商事の資産として計上した。その後昭和三七年七月、右根抵当権を日立家電が日立製作所から承継取得し、昭和三八年四月債権極度額は九、七〇〇、〇〇〇円に変更された。しかして、昭和四〇年二月、日産家電の清算に当たり、同社の日立家電に対する債務一億円余のうち、九、七〇〇、〇〇〇円の支払いに代えて本件土地建物が日産家電のため日立家電に代物弁済された。しかしながら、その登記名義は久保個人名義のままで所有権移転登記はなされなかつた。その後日立家電から久保に対し本件土地建物買戻しの話があつたが、久保に資金がなかつたため、昭和四〇年四月原告会社は、日立家電から代金九、七〇〇、〇〇〇円でこれを買受けた。代金のうち七、七〇〇、〇〇〇円については原告会社が日立製作所に預託してある取引保証金を取り崩して日立家電に移管し、残額については手形を振出して、これを支払つた。しかして原告会社は本件土地建物を会社資産に計上し、これに居住使用していた久保からは賃料を徴収し、固定資産税も納付していたが昭和四一年六月にいたり、池田との間に売買の合意ができ、金一五、三〇〇、〇〇〇円でこれを売却した。その際、本件土地建物の登記名義を久保個人名義から池田へ移転登記した。しかして原告会社は経理上右の売却代金を一〇、〇〇〇、〇〇〇円として計上し、差額五、三〇〇、〇〇〇円を簿外として久保個人の預金及び同人の妻名義で購入した土地建物の支払代金に充てていた。

およそ以上の事実を認定でき、右認定に反する証人北本信也の証言及び原告代表者久保利夫尋問の結果の各一部は爾余の証拠と対照し未だ信用しがたく、他に右認定をくつがえすに足る証拠はない。

(2)  右認定の事実によれば、本件土地建物の所有権は遅くとも昭和四〇年四月には原告に帰属したものと認めるのが相当であり、池田に対する右土地建物の売主を原告であるとして、その売却益漏れが五、三〇〇、〇〇〇円であるという被告の主張は、これを認めることができる。

3. 右内訳表「七、(1)受取利息」の更正処分額一九、二〇〇円の適法性について

前項のとおりであるから、本件土地建物に関する不動産売却益漏れ分についての簿外預金の利息も原告の収益をなすものであり、被告の主張(二)2.(2)(イ)は、これを認めることができる。

三、加算税の賦課についての被告の主張(三)について判断する。

(一)  右内訳表のうち、同表「七、(3)雑収入」不動産売却益漏れ分五、三〇〇、〇〇〇円について、及び同表「七、(1)受取利息」一九、二〇〇円について、各重加算税を賦課したことの適法性について

前掲各証拠によれば、原告は本件土地建物を池田に一五、三〇〇、〇〇〇円で売却し、現金にて代金を収受しているにかかわらず、一〇、〇〇〇、〇〇〇円で売却した旨の虚偽の売買契約書を作成し、原告会社帳簿上一〇、〇〇〇、〇〇〇円で売却した旨の虚偽の記載をなし、池田より収受した売却代金を久保名義の普通預金及び高倉静子(久保の妻の旧姓)名義の普通預金に入金したことが認められ、右事実によれば、本件土地建物を真実は代金一五、三〇〇、〇〇〇円で売却したのに、代金一〇、〇〇〇、〇〇〇円で売却したように糊塗したことが認められ、右糊塗した事実に基づいて昭和四一年四月一日から昭和四二年三月三一日に至る事業年度分の納税申告書を提出していることが認められ、これに反する原告代表者久保利夫尋問の結果(帳簿上虚偽の記載をしたものではなく、仮装脱税の意図はなかつた旨)は、前掲各証拠に照らし措信しない。

よつて不動産売却益漏れ分五、三〇〇、〇〇〇円及びその簿外受取利息一九、二〇〇円について国税通則法六八条一項に基づき重加算税を賦課したことは適法である。

(二)  同じく右内訳表の項目中、同表「六、営業費」のうち売上割戻関係未払費用七二七、二九〇円については、過少申告であることにつき原告はこれを明らかに争わないから右事実を自白したものとみなし、右事実によれば国税通則法六五条一項に基づき過少申告加算税を賦課したことは適法である。

四、青色申告承認取り消しについて

前項三(一)記載のとおりの事実が認められるから、法人税法一二七条一項三号に該当するので、青色申告承認を取り消したことは適法である。

なお、この点についての原告の反論(八)2.の主張は、これを認めるに足る証拠はない。

五、以上のとおりであるから、被告の原告に対する本件更正処分並びに加算税賦課決定及び青色申告承認取り消し処分はいずれも適法であつて、原告の本件請求はいずれも理由がないからこれをすべて棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井野三郎 裁判官 妹尾圭策 裁判官 若林諒)

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